利枝のアート探訪No.4「なぜ岡本太郎は人を惹きつけるのか?」

「芸術は爆発だ!」という言葉で知られる岡本太郎。なぜ彼の作品は人を惹きつけるのでしょうか?その理由を探るために、川崎市岡本太郎美術館に行ってきました。

岡本太郎作品 『手の椅子』

岡本太郎作品
『手の椅子』

岡本太郎の作品の魅力は、その破壊力にあります。急速に推し進められる近代化を破壊し、人間の生命力を呼び起こさせる。代表作「太陽の塔」は、大阪万博のシンボルとなるべく丹下健三が作った「大屋根」を突き抜けて話題をさらいました。近代国家の象徴としての万博を破壊し、前近代的な祭りに転換してしまったのです。

私はイギリスの大学院で社会人類学を学び、エスノグラファー(民族学のトレーニングを受けた調査者)として、メディアやアートに関する現場に赴き、文化を解釈し、伝えようとしています。岡本太郎もフランスの大学でマルセル・モース教授の元で民族学を学びました。客観性を重視した当時の民族学は、主観的に表現をするアートと正反対であり、絵を描くことを辞めてしまうほどのめり込んだそうです。

「不思議なことに岡本太郎の作品を見ると赤ちゃんが笑う」と北條秀衛館長が教えてくれました。どの社会にも染まっていない赤ちゃんが笑うということは、彼の作品には人類共通の感性が宿っているのだと思います。エスノグラファーとしての岡本太郎は、多様な文化を解釈し、作品を通して普遍的な生命力を表現し、今も私たちに問いを投げかけ続けているのではないでしょうか?

川崎市岡本太郎美術館(TARO OKAMOTO MUSEUM of ART, KAWASAKI)〒214-0032 川崎市多摩区枡形7-1-5 TEL 044-900-9898 FAX 044-900-9966

高橋利枝(メディア・エスノグラファー、早稲田大学文学学術院教授)

About Toshie Takahashi

Toshie Takahashi is Professor in the School of Culture, Media and Society, as well as the Institute for Al and Robotics,Waseda University, Tokyo. She was the former faculty Associate at the Harvard Berkman Klein Center for Internet & Society. She has held visiting appointments at the University of Oxford and the University of Cambridge as well as Columbia University. She conducts cross-cultural and trans-disciplinary research on the social impact of robots as well as the potential of AI for Social Good. 【早稲田大学文学学術院教授。元ハーバード大学バークマンクライン研究所ファカルティ・アソシエイト。現在、人工知能の社会的インパクトやロボットの利活用などについて、ハーバード大学やケンブリッジ大学と国際共同研究を行っている。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会テクノロジー諮問委員会委員。】
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