「芸術は爆発だ!」という言葉で知られる岡本太郎。なぜ彼の作品は人を惹きつけるのでしょうか?その理由を探るために、川崎市岡本太郎美術館に行ってきました。
岡本太郎の作品の魅力は、その破壊力にあります。急速に推し進められる近代化を破壊し、人間の生命力を呼び起こさせる。代表作「太陽の塔」は、大阪万博のシンボルとなるべく丹下健三が作った「大屋根」を突き抜けて話題をさらいました。近代国家の象徴としての万博を破壊し、前近代的な祭りに転換してしまったのです。
私はイギリスの大学院で社会人類学を学び、エスノグラファー(民族学のトレーニングを受けた調査者)として、メディアやアートに関する現場に赴き、文化を解釈し、伝えようとしています。岡本太郎もフランスの大学でマルセル・モース教授の元で民族学を学びました。客観性を重視した当時の民族学は、主観的に表現をするアートと正反対であり、絵を描くことを辞めてしまうほどのめり込んだそうです。
「不思議なことに岡本太郎の作品を見ると赤ちゃんが笑う」と北條秀衛館長が教えてくれました。どの社会にも染まっていない赤ちゃんが笑うということは、彼の作品には人類共通の感性が宿っているのだと思います。エスノグラファーとしての岡本太郎は、多様な文化を解釈し、作品を通して普遍的な生命力を表現し、今も私たちに問いを投げかけ続けているのではないでしょうか?
川崎市岡本太郎美術館(TARO OKAMOTO MUSEUM of ART, KAWASAKI)〒214-0032 川崎市多摩区枡形7-1-5 TEL 044-900-9898 FAX 044-900-9966
高橋利枝(メディア・エスノグラファー、早稲田大学文学学術院教授)