利枝のアート探訪No.7『200年前のイノベーター、ジュリア・マーガレット・キャメロン:肖像画から肖像写真へ』

%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%a1%e3%83%ad%e3%83%b3%e5%b1%95ジュリア・マーガレット・キャメロン展に行ってきました。キャメロンは、写真をアートにした最初の女性カメラマンです。それまでの絵画による肖像画の世界から、写真という新たなテクノロジーを使って、多くの著名人のポートレートを残しています。彼女はまさにイノベーターと言えるでしょう。

しかしながら、彼女の特徴的な作風は決して初めから計算されたものではありませんでした。キャメロンは偶然起きてしまった失敗をプラスに転化しているのです。わざと写真に指紋を残したり、ネガに傷をつけたり、ソフトフォーカスしてぼかしたりしています。写真というテクノロジーを使いながらも、絵画のような芸術作品としての手作り感を表現しているのです。

テクノロジーによって可能となった現代の複製文化においては、完璧な写真よりも皮肉にもキャメロンが失敗して出来た一点ものの写真に価値が見出されています。AI(人工知能)やロボットの時代においては、完璧ではない人間ならではの手作り感に、新たな価値が求められていくのかもしれません。

三菱一号館美術館で9月19日までです!http://mimt.jp/cameron/

高橋利枝(メディア・エスノグラファー、早稲田大学文学学術院教授)

About Toshie Takahashi

Toshie Takahashi is Professor in the School of Culture, Media and Society, as well as the Institute for Al and Robotics,Waseda University, Tokyo. She was the former faculty Associate at the Harvard Berkman Klein Center for Internet & Society. She has held visiting appointments at the University of Oxford and the University of Cambridge as well as Columbia University. She conducts cross-cultural and trans-disciplinary research on the social impact of robots as well as the potential of AI for Social Good. 【早稲田大学文学学術院教授。元ハーバード大学バークマンクライン研究所ファカルティ・アソシエイト。現在、人工知能の社会的インパクトやロボットの利活用などについて、ハーバード大学やケンブリッジ大学と国際共同研究を行っている。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会テクノロジー諮問委員会委員。】
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