『AI/ロボット社会の未来』@STSフォーラム2017

AI社会の未来について探求するため、STSフォーラム(科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム)2017に参加しました。2017年10月1日から3日まで京都国際会館で行われたこの国際会議には、皇太子ご夫妻、安倍首相、世界各国の大臣やノーベル賞受賞者、企業、大学の研究者など80カ国から約1400人が参加し、連日活発な議論が繰り広げられました。私はロボット研究の権威であるパオロ・ダリオ先生のセッションで『ロボットの将来』について議論しレポーターを務めました。

開会式における安倍総理のスピーチ

日本社会のパラダイム・シフト

開会式では、安倍晋三首相が、科学技術による日本の構造的な問題の解決について、ロボットとオープンイノベーションを例に挙げて、話されました。そして規制緩和により、これから日本を世界のイノベーションの起点にしたいと強調されました。

続いて、世耕弘成経済産業大臣が、日本の産業が目指す姿として「Connected Industries」についてお話しになりました。このコンセプトは、人、モノ、技術、組織等が様々につながり新たな価値創出を図ることによって、Society 5.0という新たな社会へとパラダイム・シフトさせるというものです。世耕大臣が示唆されたCC(competitive collaboration/ collaborative competition)をはじめとして、AIに関するグローバルな「競争と協調」について多くの登壇者が言及しました。

AIのセッションでは、世界中のAIがネットワークにつながれた場合の自律性や進化など、AIの社会的なインパクトについて、リスクや倫理、モラルの問題を含めて盛んに議論されました。ビッグデータのセッションでは、データベースの形式がEUや国によって違うため標準化すべきかどうか、データ共有に関する倫理的問題など、グローバルとローカル、競争と協調に関して議論されました。

閉会式には皇太子ご夫妻が出席され、皇太子さまが人類が直面する問題について、より長期的な視点で世界のリーダー達が議論することの必要性について述べられました。

ロボットの未来

Paolo Dario先生の『ロボットと自律的システム』のセッションにて

Paolo Dario先生の『ロボットと自律的システム』のセッションでは、ロボットの将来について、PaoloDario先生、Angelo Volpi氏などと共に議論を行いました。議論の内容を以下の6点に集約し、セッションの最後に発表しました。

  1. 「AIは人間の脳にどこまで近づけることが出来るのか?」という問いに対しては、脳科学、人工知能、ロボット工学などを合わせたニューロロボット工学(Neurorobotics)の有効性が示唆されました。
  2. 「どんなサービスロボットが必要なのか?」という問いに対しては、医療分野における、①高齢者のための認知症対策と②介護補助のためのロボットの2点があげられました。高齢者のためには、知能ばかりでなく、200kgを持ち上げられるような「強い」ロボットが必要だと指摘されました。
  3. 「将来どんなロボットが必要か?」という問いに対しては、ロボット研究者自身の興味や関心で作るのではなく、社会の問題解決のためのロボットが必要である。また、人間とロボットが役割分担をし、人間と共に働くことができるロボット。さらに安価で、リサイクル可能な省エネルギータイプのロボットのデザインを考えることによって、エネルギー消費が削減され、持続可能性につながる点が指摘されました。
  4. 「日常生活におけるロボットの役割」については、スマートフォンとロボットの違いが議論されました。スマートフォンのようにコミュニケーション・ツールとしてだけではなく、ルンバのように実際に人間を助けるロボットが必要だと指摘されました。
  5. ユヴァル・ノア・ハラリの「知能と意識」に関する問いに関しては、石や自然にも魂が宿るというようなアニミズムなど、西欧と日本のロボットに関する文化的な違いについて議論しました。
  6. 最後に「アンドロイドとは何か?」という問いに関しては、ロボットが人間に似てくると怖いと感じる「不気味の谷」について、特にアメリカ人の女性研究者は「アンドロイドと目が合うとゾンビのようで怖い」と盛んに主張していました。アンドロイドは「”he/she”なのか、それとも”it(単なるモノ)”なのか」という議論でこのワークショップは時間切れになりました。

AI社会の行方

今回のSTSフォーラムでは、AI、IoT、ビッグデータ、ロボットなど新たな科学技術の光と陰について、連日活発な議論がなされました。最終日の基調講演では、ハーバード大学のEric Mazur教授(応用物理学部長)が、科学者と社会全体との間のギャプについて指摘し、科学技術の社会的インパクトの大きさから科学者に対する社会科学の教育の必要性について強調されました。この指摘は、スタンフォード大学のJames D. Plummer教授(工学部前学部長)がIEEE Vision, Innovation, Challenges Summit (2017年5月)の基調講演で話された工学部の学生に対するlife skill educationの必要性とも重なります。

今回のSTSフォーラムへの参加を通して、AI/ロボット社会におけるイノベーションには、グローバルとローカル、自然科学と人文社会科学、競争と協調などの2項対立を超えたアプローチの必要性を強く感じました。未来をよりよいものにするためには、利用者を含めたAIに関わる全てのステークホルダーがそのチャンスとリスクを知り、「人間にとって幸せなAI社会」について共に考え、創造していく必要があるのではないでしょうか?

謝辞
ご招待頂きましたNPO法人STSフォーラム事務局理事長の尾身幸次様はじめ、事務局の皆さま、Paolo Dario先生に心より感謝致します。

安倍首相のスピーチの内容https://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/1001sts.html

STSフォーラムのサマリー(英語)http://www.stsforum.org/wp/wp-content/uploads/STS2017_web.pdf?lang=ja

connected industriesのコンセプト(動画)

About Toshie Takahashi

Toshie Takahashi is Professor in the School of Culture, Media and Society, Waseda University, Tokyo. She was appointed faculty fellow at the Berkman Center for Internet and Society at Harvard University, 2010-2011 and, before that, visiting research fellow at the Department of Education in the University of Oxford. Her current research is an ethnography in youth engagement with digital media in US, UK and Japan. She has been appointed to the technology advisory committee of The Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games 2020. 【早稲田大学文学学術院教授。東京大学大学院博士課程単位取得満期退学。英国LSE大学院Ph.D.取得 (博士号:メディア・コミュニケーション)。オックスフォード大学やハーバード大学と「若者とデジタル・メディア」に関する国際共同研究を行う。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会テクノロジー諮問委員会委員。】
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