『スマート・ウィズダム2040: ヒューマン・ファースト・イノベーションの可能性』@総務省

総務省 情報通信審議会 情報通信政策部会 IoT新時代の未来づくり検討委員会 産業・地域づくりWGで『スマート・ウィズダム2040: ヒューマン・ファースト・イノベーションの可能性』についてプレゼンテーションをしました。この委員会は、2020年東京オリンピック後の、2030年、2040年の日本社会の産業と地域づくりを検討するために設置されたものです。

2017年12月7日に開催された第一回目の会議では、デロイトトーマツコンサルティング合同会社副社長・パートナーの川原均さんが『2030年-40年産業における将来ビジョンを描くための視点』について、次いで私が、そして特定非営利活動法人グリーンバレー理事長の大南信也さんが『ICTを活用した地方創生の現況と将来展望』についてプレゼンをしました。最後に各構成員から将来展望について活発な議論がなされました。

私のプレゼンテーションでは、2017年に参加したAIやロボットに関する国際会議から、『ヒューマン・ファースト・イノベーション』として以下の3点を提案しました。

  1. AIファースト、ジャパン・ファーストからヒューマン・ファーストへ
  2. クロスディシプリンによるイノベーション
  3. AI社会に適応し、自己創造する力

以下それぞれについて簡単に説明したいと思います。

 1. AIファースト、ジャパン・ファーストからヒューマン・ファーストへ

AIファーストからヒューマン・ファーストへ
2017年3月にハーバード大学と一緒にAIに関する国際シンポジウム『AI For Social Good』を早稲田大学で開催しました。この国際シンポジウムから学んだことは、AIは人間によって与えられた目的を果たすための手段を最適化していく道具に過ぎないということです。すなわち目的設定は私たち人間がしなければならない。だからこそ私たち人間が「良い社会を作る」という目標を立てる必要がある。その上で人間にとって幸せな社会を作るためにAIに何が出来るかを考えなければなりません。つまりAI社会について考えるとき、AIファーストではなく、ヒューマン・ファーストであるべきなのです。 

ジャパン・ファーストからヒューマン・ファーストへ
2017年8月のROMAN2017、そして10月のSTSフォーラムでのPaolo Dario先生のワークショップ『ロボットと自律的システム』において、ロボットに対する日本の特異性について激しい議論が行われました。グローバル市場を考えるとき、これらの議論を踏まえて日本と西欧の文化的な差異に敏感になる必要があります。現在、世界のプラットフォームはアメリカの企業(AFGA:apple, facebook, google, amazon)が占めています。人口減少国家である日本にとって、今後はクールジャパンを超えて、人類全体に寄与できるようなヒューマン・ファーストのアプローチが必要になるのではないでしょうか

2. クロスディシプリンによるイノベーション 

このようなヒューマン・ファーストなイノベーションを起こすにはどうしたらいいのでしょうか?

2017年5月にサンフランシスコで開催されたIEEE Vision, Innovation, Challenges Summit の基調講演で、スタンフォード大学のJames D. Plummer教授は、工学部の学生に対するlife skill educationの必要性について示唆されました。また、STSフォーラムでも、ハーバード大学のEric Mazur教授が科学技術の社会的インパクトの大きさから、科学者に対する社会科学の教育の必要性について強調されました。先に言及したワークショップでも、将来のロボット開発について、ロボット研究者自身の興味や関心で作るのではなく、社会の問題解決のためのロボットが必要という点があげられました。このように自然科学と人文社会科学の壁を超えたクロスディシプリナリーなアプローチが求められています。

3. AI社会に適応し、自己創造する力

AIに関する教育・啓蒙活動
ヒューマンファースト・イノベーションのためには、専門家ばかりでなく、より広く社会一般の人々が、AIについて知ることが大切です。2017年7月、起業家の方達を対象にナレッジキャピタルで『ソーシャルグッドのための人工知能: AI時代におけるイノベーションと自己創造の可能性』と題した講演とワークショップを行いました。AIに関するチャンスとリスクについてお話しした後、ワークショップでは、「社会の課題を解決したり、社会をよくしたりするために、AIを使ったサービスや商品を企画して下さい!」というミッションを出し、以下の?に入るものを考えて下さいとお願いしました。社会にとって必要なAIを創るためには、AIに関する教育・啓蒙活動が必要となるでしょう。

『?x AI =ソーシャルグッド!』

AI時代を生きるためのスマートウィズダム
ユヒヴァル・ノア・ハラリ (Harari, 2017)は、「21世紀の社会で生き残るためには常に学び、変化し、自己改革が必要になる。」と述べています。50代になっても60代になっても70代になっても、学び、そして自己改革をしないと生き残ることができない時代が到来するというのです。AI社会においては、AIをうまく取り入れながら一人ひとりが自己実現を図っていく必要があります。AIによって仕事が奪われるというリスクばかりでなく、AIによって言葉の壁を越えて、グローバル社会の中で色々な人や文化、モノとの相互作用が可能となるというチャンスもあります。拡大されたコミュニケーション空間における多様な選択肢の中で、今までにない自己創造、自己実現が可能になることも考えられるのです。

AI社会を生きるためには、AIがもたらす新しいチャンスを最大に享受して、リスクを最小にして自己実現を可能にするための「スマートウィズダム」を身につける必要があるでしょう。2040年が人間にとって幸せなAI社会になるためには、政府や企業ばかりでなく、私たち一人一人の「スマートウィズダム」によって、カオスの縁から秩序を創発させる必要があるのです。

About Toshie Takahashi

Toshie Takahashi is Professor in the School of Culture, Media and Society, Waseda University, Tokyo. She was appointed faculty fellow at the Berkman Center for Internet and Society at Harvard University, 2010-2011 and, before that, visiting research fellow at the Department of Education in the University of Oxford. Her current research is an ethnography in youth engagement with digital media in US, UK and Japan. She has been appointed to the technology advisory committee of The Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games 2020. 【早稲田大学文学学術院教授。東京大学大学院博士課程単位取得満期退学。英国LSE大学院Ph.D.取得 (博士号:メディア・コミュニケーション)。オックスフォード大学やハーバード大学と「若者とデジタル・メディア」に関する国際共同研究を行う。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会テクノロジー諮問委員会委員。】
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