ブログ『スマートウィズダム』No.8『AI/ロボットに関する若者の意識調査』

ポストオリンピックの日本はどのような社会になるのでしょうか?2030年、2040年の日本社会を考えるために、2017年8月、早稲田大学のオープンキャンパスに訪れた10代の若者(14~19歳)計203名に、AIやロボットに関しての意識調査に協力してもらいました。2045年シンギュラリティには、40代になり社会の中心になる現代の若者たちが、AIやロボットなどの新しいテクノロジーに対して、どのようなニーズがあるのか探ってみたいと思います。

新しいテクノロジーへの適応

セクション1は、アンドロイドで有名な大阪大学の石黒浩教授とともにホログラム、AI、BMI、VR(仮想現実)、ロボット、エンハンスメントなど、「新しいテクノロジーの適応」について質問項目を作成しました。

調査結果の一部を紹介すると、現代の若者たちは、ホログラム(63.1%)やBMI(55.2%)を望み、VR酔いをしない(46.8%)など、VRネイティブの世代と言えるかもしれません。新しいテクノロジーに関して適応力がある一方で、自分の能力を向上するために、インプラントや身体の機械化などのエンハンスメントを希望する人は約2割と消極的でした。

AIのチャンスとリスク

セクション2は、スタンフォード大学の“Artificial Intelligence and Life in 2030”レポートと、2017年3月にハーバード大学と共に早稲田大学で開催した国際シンポジウム“AI for Social Good”から得られた知見を参照して、AIのチャンスとリスクについて質問項目を作成しました。

図2. AIのチャンス

AIサービスに関しては、「肉体労働などの危険な仕事を人間がやる必要がなくなる」(79.8%)や「ドローンが宅配物を届ける」(77.8%)など、危険な仕事や人間に負担がかかっている宅配などの仕事の代替を望んでいます。また、「車が空を飛ぶ」(73.9%)や「自動運動化」(70.9%)したりなど、車に関する新たなサービスのニーズも高いと考えられます。さらに、マッチングサービスによって、自分にあった「会社や仕事」(72.4%)、および「大学や学部」(70.5%)など将来の進路に関する提案も望んでいます。

一方、ホテルや店頭でのロボットによる接客を望む人は約半数であり、友達(35.5%)や恋人(7.4%)、動物ロボット(26.6%)などに関してはあまりニーズがありませんでした。

AIのリスクに関しては、約8割以上の若者たちが全ての質問項目に対して抵抗があると答えています。そのため今後AIに関する教育・啓蒙活動を行い、リスク・コミュニケーションを十分に取りながら、リスクマネジメントをしていくことが大きな課題となるでしょう。

ロボットの導入

図3. ロボットの導入

セクション3は、イタリアのLeopoldina Fortunati教授 (University of Udine) とオーストラリアの Larissa Hjorth教授 (RMIT University)と共に、以下の10分野についてロボットの導入について聞きました。

  1. 製造業
  2. 宇宙開発
  3. 捜索・救助
  4. 軍事・防犯
  5. ヘルスケア
  6. 家事
  7. 交通
  8. 子供・高齢者や障害者のケア
  9. 教育
  10. 娯楽

ロボットの導入に関して概ね好意的であったにも関わらず、ヘルスケア(45%)、子供や高齢者、障害者のケア(40%)、教育(25%)など、コミュニケーションや気配りが必要な分野に対しては消極的でした。

AI社会の創造

図1.AI社会の創造

今回の調査に協力してくれた高校生たちは、AIやロボットなど新しいテクノロジーの導入に関して好意的である一方、「AIやロボットが下した決断に対して、正しいかどうか人間が議論するべき」(91.2%)として、盲目的にAIの決断に従うのではなく、自ら「AIを使いこなせるようになりたい」(72.9%)と考えています。また世界の人々と協力して新たなテクノロジーを生み出すとともに(85.2%)、利用と規制に関して一緒に考えていきたい(70.9%)という国の枠組みを超えた共創の意識が強いこともわかりました。

そして約7割の若者が「2030年の社会にわくわくしている」と答えていることは、AI化されたポストオリンピックの社会に期待感を持っていることの表れと言えるでしょう。

今回は予算の制約上、限られた範囲内でしかアンケート調査を行うことが出来ませんでした。このアンケートに答える事を通して、AIのチャンスとリスクについて学ぶことが出来ますので、今後是非、多くの方にアンケートにご協力頂ければと思います。

調査は、2017年8月6日、早稲田大学のオープンキャンパスにて対面式アンケートによる定量調査によって、14~19歳の男女計203名(男性94名;女性109名)に対して行った。

参考文献

高橋利枝「プロローグ(解説):ソーシャルグッドのための人工知能: AI 時代のチャンスとリスク」『国際シンポジウムAI for Social Good発表論文集』pp.3-13, 2017月8月。[PDF]

About Toshie Takahashi

Toshie Takahashi is Professor in the School of Culture, Media and Society, as well as the Institute for Al and Robotics,Waseda University, Tokyo. She was the former faculty Associate at the Harvard Berkman Klein Center for Internet & Society. She has held visiting appointments at the University of Oxford and the University of Cambridge as well as Columbia University. She conducts cross-cultural and trans-disciplinary research on the social impact of robots as well as the potential of AI for Social Good. 【早稲田大学文学学術院教授。元ハーバード大学バークマンクライン研究所ファカルティ・アソシエイト。現在、人工知能の社会的インパクトやロボットの利活用などについて、ハーバード大学やケンブリッジ大学と国際共同研究を行っている。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会テクノロジー諮問委員会委員。】
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