2016年10月22日、Nack5スタジアム大宮にて、スタジアムのスマート化のための第2回目フィールドワークを行いました。全世代を対象に行った第1回目の調査結果から、若年層が他の世代と比較して、ソーシャルメディアとのエンゲージメントが突出して高いことが明らかになりました。また、J−リーグなどは、顧客の高年齢化に伴い、新たに若年層の顧客を獲得する必要があります。そのため第2回以降の調査では、テクノロジーのアーリーアダプターであり、ヘビーユーザーである若者層を中心としたサンプリングを行い、若年層の利用実態やアプリや新サービスへの評価、ニーズを把握しました。
今回は実態調査から明らかになったスタジアム内でのテクノロジーによる新サービスのニーズについて、簡単に述べたいと思います。
若者たちにテクノロジーによる新サービスのニーズについて聞いたところ、「ドローンによる今までにない視点からの緊迫した映像」(62.6%)が約6割と圧倒的に多く、次いで、約3割が「イベント時やゴール時に3Dホログラムがスタジアム上に投影される演出」、「解説付きでスタジアム観戦できるサービス」(いずれも29.9%)、「追っかけ映像のズーム機能やスーパースローなど、選手のプレー映像が自分好み再生できるサービス」(27.1%)という結果でした。
インタビュー調査からは「ドローンを使った上からの映像だと、試合が全体から見られていいと思う。手の動きとか足さばきとかが間近で見られたらうれしい」という声が聞かれました。
このように上位4項目に共通する点は全て「スタジアム及び映像においての試合観戦」の要素を充実させる『観戦型』サービスと言えます。今回の調査対象者が大宮アルディージャの熱狂的なファンであったため観戦に付加価値を求めているためと考えられます。
次に多かったのは「自分がピッチに立っている映像がデジタルサイネージに映し出されるサービス」や「VR(仮想現実)を利用した、選手になりきってプレーできるサービス」(共に26.1%)の『体感型』サービスでした。
また、『観戦型』サービス、『体験型』に比べて、「スタッフや店員がロボットのスタジアム」(17.7%)、「AR(拡張現実)を利用して、自分の座席をキャラクターが案内してくれるサービス」(4.6%)など『おもてなし』サービスに関してはあまりニーズが高くありませんでした。
しかしながら「使ってみたいサービスはない」(1.8%)と答えた人はほとんどいなかったため、多くのサポーターがスタジアム内においてテクノロジーの利活用による新サービスに期待を寄せていることも伺われます。
第4回調査では、大宮アルディージャのサポーターの若者たちとスポーツファンでない若者たちとのニーズについて比較をしてみたいと思います。
参考文献
高橋利枝「ICTの利活用による地域の活性化に関する調査研究」NTTグループ委託研究、2017年1月。
高橋利枝(メディア・エスノグラファー、早稲田大学文学学術院教授)